小野主上に嘘つきました。

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前回の記事で、

>主上、ゆっくり堪能しますのでどうかその間に『十二国記』の続きをぜひに……!

と、『屍鬼』文庫版全5巻をのんびり読むつもりだったんですが、舌の根も乾かぬうちに、全て読み終えてしまいました。おいこら自分。
いやあのですね、我慢できなかったんです。

久しぶりに、早くページを捲りたい、その先を知りたいという衝動に駆られました。
重く苦しく息詰まる恐怖が待ち受けているのを知りながら、読まずにはいられない衝動。
発刊されてから随分時が経ちましたが、今まで気になりながら手に取れなくて。

残暑が戻ってきたような、蒸し暑く寝苦しい夜にぴったり。
正にそんな状況下で夜中までがっつり読んでしまいました。
深夜まで起きてるんだったら、作品書きなさい私。





以下感想、ネタバレ。


村は死によって包囲されている―――。
古い因習を頑なに守り、発展から隔絶されまたそれを望み存在する小さな山村、外場村。
その村の奥の集落で、死因もわからぬほど無残な姿の3人の死体が発見される。
まるでそれが始まりかのように、村の中で一人また一人…と人が死んでいく。

村で一体何が起きているのか、原因は何なのか。
気が付けば次第に物語に引き込まれ、止められなくなっていく。
文庫第1巻は、全てが村の説明と情景・人物描写。
退屈に思えてしまうのは確かなのだけど、これがあるからこそ後の巻が生きてくる。
このあたりは、『十二国記』のはじまりである『月の影 影の海』上巻にも似ている。
第2巻では次々と村人が死に、また行方知れずになっていく恐怖。
きっと、ここでハードカバーの上巻が終わるのだろう。(違ってたらごめんなさい)
そして第3巻でついに「屍鬼」の正体が明らかになり、
ああやっぱり……と思う間もなく、第4巻・5巻で恐ろしくも哀しい終幕へ向かい加速する。
その加速度はあっけないくらいで、一気に終焉へ。まるで転げ落ちる岩のように。
ラストまで読み切って、またすぐもう一度序章へ戻って読み返したくなる。

緻密に、そして徹底的に書かれる人物描写は、自分に似た登場人物を探す旅でもある。
150人を越える(と言われる)登場人物をどう整理しろっていうんだー!とは思うけど、
大体が「その他村人」に当てはまると思うのでいいか。
でももしこれから読むなら、1巻・2巻はじっくりゆっくりと読むのをおススメする。
必ずとは言わないけれど、自分に近いと思える誰かが見つかるだろう。
私は……うーん、もしかすると元子かもしれない。ああまで壊れはしないけれど……。
加奈美か元子かで言えば、間違いなく元子なんだろうな。
子を愛するがゆえ、突如襲い来る不安というのは理解できるから。
最後に加奈美に対してとった行動も、わからないでもない。
もちろん、加奈美と妙の姿にも自分だったら同じ事をしていたかもしれないけれど。

あとは、夏野には生きていて欲しかった。でも彼の選択は正しいと思う。
夏野そして田中姉弟と、坊主・静信&医者・敏夫との繋がりが断たれるのもまた悲劇。
田中姉弟のくだりでは涙が出た。律子と徹の最期もそう。
屍鬼VS人間の構図の中でも、完全な正邪や勝ち負けはないのだと思った。
どちらが良い悪いではなく、誰が正しいのでもなく。
一番怖いのは人間。ラストの寺での場面では背筋が寒くなった。
静信・敏夫・沙子・辰巳・千鶴・夏野・かおり・昭・恵・正雄・篤・結城……
誰に一番感情移入できるかと言ったら答えられないけれど、静信は好きになれない。
と言いつつ、その苦悩もあがきもまたわかるような気がして困るのだ。
子を持つ親だったり、屍鬼に対する思いや行動だったりの部分で、
実は大川のご主人に一番共感しているのかもしれない(笑)。

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凄いとか怖いとか、面白かったなどと一言では言い表せない作品。
これは私が単に小野作品が好きだからという訳ではない。
図書館で文庫本を借りたけれど、ハードカバーを買って手元に置きたい。そう思う。


そして、小野主上。『十二国記』の続きをぜひに!!(まだ言うか)
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